以前、この教室だよりで『そろばんは天才製造機と世の中に認知される日も遠くないかもしれません』と書いたことがありますが、実際に世界中でそのような研究が進められており、国際論文も多数発表されています。その中でも興味深いものを2つ紹介します。
『そろばん授業が発達性算数障害をゼロにすることができるのか』
中国・北京師範大学のXinlin Zhou氏が2020年に発表した論文。
【概要】
中国の公立小学校1年生を「そろばん式暗算」を学習するクラスと「一般的な計算練習」を学習するクラスに分ける。2〜3年の学習過程終了後、認知能力と学習能力を測定する8種類のテストをおこなった。「一般的な計算練習」のクラスでは6.4%が発達性算数障害に該当したが「そろばん式暗算」を学習したクラスでは発達性算数障害に該当した生徒はゼロだった。また「そろばん式暗算」を学習したクラスではコルシブロックスパン課題と幾何図形探索課題の成績が有意に高かった。
【大雑把な解説(小黒による解釈なので間違っていたらすみません)】
一般的に、小学生の3〜7%は発達性算数障害に該当するそうです。ところが「そろばん式暗算」を学習した生徒には該当者がいなかった。そしてコルシブロックスパン課題の成績が高いといいうことはワーキングメモリーが大きい、幾何図形探索課題の成績が高いということは図形問題が得意、ということだと思われます。
つまり「そろばん式暗算」を学習することで「生まれつき算数が苦手な子でも算数ができるようになる」さらに「計算だけでなく図形問題やその他の勉強も得意になる」ということだと思われます。
『小学生のそろばんによる認知能力の発達:無作為統制による臨床検証』
スペインで2021年に発表された論文。
【概要】
スペインの7歳〜11歳の小学生を「そろばん式暗算」と「従来の暗算」をさせるグループに分けて8週間の練習を行った。練習に取り組む前と後に4種類の認知能力測定テストを行い比較した結果、「そろばん式暗算学習により集中力と記憶が有意に向上した」「創造的能力がそろばん学習グループは向上し、従来の暗算練習グループでは成績が悪化した」と報告されている。
【大雑把な解説(小黒による解釈なので間違っていたらすみません)】
昔から言われているように『そろばん学習が集中力・記憶力・想像力を育てる』ということが科学的に証明されたということだと思われます。
以上、2つの論文について紹介させていただきましたが、ここで注目して欲しいのは「そろばん」だけではなく「そろばん式暗算」が効果があったと書かれていること。
小黒珠算教室は暗算に特化したそろばん教室として授業を行ってきましたが、それはただ単に「計算が速くなる」ということを身につけて欲しいのではなく、「そろばん式暗算を通じていろいろな能力を伸ばして欲しい」と思ってきたからです。長年、その効果は実感してはいたものの、なかなか言葉では言い表せずにいましたが、こうして論文として証明されつつありとても嬉しいです。
(教室だより令和4年5月号より)